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「太古から存在するものにはそれだけで価値が宿る」


「いきなり何言ってるんだ? とうとう惚けたか?」
「何を言ってるのは君の方だろう。君が新しい箒が欲しいといったからそれについて言ってるんじゃないか」

 そうだったっけか、と魔理沙は考えるも、しかしすぐに思い出す。
 確かに、そんなような事を言ったかも、と。

「ああそうだな。私の頼みを放棄しない香霖ってのも珍しいけどな」
「別に君のためだけじゃない。僕にも欲しいものがあるんだ」

 そうかい、と頷きながら予想通りの答えだと魔理沙は考える。
 香霖がまさか私のために動いてくれることなんてあんまりないとして。

「さて。昔から在る物というのはそれだけで人の信仰を受け人の想像を受け入れる。例えばここにある石が地球が始まってからある物だとしよう」
 
 言って香霖が拾ったのはどこにあるものような石。
 どこを見ても変哲もない。

「君は今大したことがないと考えているだろう。けれど、もしこれが数億の時を生きていればどう思う?」
「別に石は石だろ?」

 呆れながら魔理沙は足を進める。
 そう、足を進めている。

「そうだね。けれど多くの人は考える。昔の石ならば、様々な物を見ているだろう。ならば過去にあって今も在る。もしかすれば自分の知らない何かを見たかもしれない」
「香霖みたいのが沢山居るんだな。変な感じだぜ」
「ふむ。信じないのかね。そうだな、ああ、丁度良く人が歩いてきた」

 同じく香霖が足を進めるのを見ながら魔理沙が前を見る。
 すると、山の上から人が一人歩いてきた。
 こんな山の上からというのはよくわからないがけれど歩いてきたのだから仕方がない。

「やあ、こんな所で奇遇だね」
「あ、はい。ちょっと射命丸さんと逸れてしまって探しているところです」

 ありえないついでに、歩いていた人物は稗田・阿求という少女。
 こんな恐ろしい山を歩いているなんて、珍しいという事ではない。

「成程。ならば焚き火でもするか、大事件とでも叫べば来るんじゃないかな。一目散にね」
「なんなら空を飛んで探してきてやろうか?」
「別にそこまでして頂かなくても大丈夫ですよ」

 香霖の言葉を聞きながらの魔理沙の言葉に阿求は笑みを浮かべながら首を横に振る。
 それに妙な感じを受けるけれど、別にいいというものを無理強いすることもない。

「ああ、ところでこの石なんだが神代からあるものでね。君はどう思う?」
「へぇ。それはまた珍しいですね。神様の力でも宿っているんですか?」
「勿論だとも。悠久の時を静観し続けた石だ。神の力どころか、神様自体であるかもしれない」

 香霖が真面目に言う姿を見ながら魔理沙は呆れた顔になる。
 よくもそう嘘が口から出てくものだと。

「それはまた凄い一品ですね」
「ああ。僕も魔理沙と逸れたんだがこれを持っていたからすぐに合流できた。もしかすれば待ち人が巡ってくる効果もあるかもしれない」
「……お幾らですか?」
「おっと、これ程貴重なものを売るなんてことは出来ないね。……とはいえ君はお得意様だ。貸すことは出来るよ」

 更に魔理沙はあきれ果てる。
 ここに来るまで、の間はそれほど覚えてはいないが、何故そんな嘘をつくのかと。
 とはいえ香霖の邪魔をする程ではなく、また売るのでないなら別に大した被害もない。
 ただ騙されるだけだと結論を出して魔理沙は傍観という選択肢を選んだ。

「成程。ではお借りしておきましょう。効果があれば、ご恩は返しますよ」
「いやいや、気にしなくてもいいよ。それじゃあここは危険な妖怪の山だ。早く彼女と合流できるといいね」
「はい。それでは」

 息を切らせて阿求が降りていくのを未ながら二人はしばらくの間、無言で上っていたが突然香霖が話し出す。

「射命丸君がすぐに彼女を見つけてくれればあの石はそういう物として価値を持つ。更に太古からという事でそれ自体が意味を持ってくる。こうして一つのご神体が産まれたわけだ」
「でもあれ香霖の嘘だろ?」
「さてね。けれどあれが昔から在る物の効果というわけさ。つまり人の信仰を受けることによって全ては価値を持ってくる。勿論本物ならば人が居なくても価値は存在するだろう。だが人が居なくなれば妖怪もおのずと消える。それならば人が存在することによって物は価値を持っているといっても差し支えないね」

 話半分に聞きながら頷き、ようやく目的の物が見えてきた。
 目を向ける先には大きな木。
 まるで妖怪のような大きさの大樹。

「けど、信仰っていうが。じゃああの大樹はどうなんだよ」
「数百年以上もある大樹だ。それだけで価値は存在するということだよ。長い年月を経た大樹だ。木行だし、君の力も通りやすいだろうさ。それだけの価値しか今はないが、君がそれを使っている内にあの大樹は魔法の力を通しやすい、魔法の力を増幅する。そんな空想が生まれ、君の箒に信仰も生まれるだろう。そうすれば数年後には、君の箒はそれ自体が魔力を持つだろうね」
「箒ってだけだからそこまで凄いのは望んでないけどな」

 よく其処まで深く考えられるものだと考えのとは別に。
 更に香霖が其処まで考えてくれるのだと考え、魔理沙は少し心が弾むのを感じる。

「さて。それじゃあ枝を切ろう。とはいえ僕切らないから君が切ってくれないか」
「まぁ適材適所って奴だな」

 頷き、魔理沙が自分の魔法で浮かぼうとして、気づく。

「そういや香霖、箒はないのか?」
「前まで使っていたのはどこに行ったんだ」
「ああ、すまんすまん、忘れてきたみたいだぜ」

 笑いながら言う魔理沙に香霖は呆れる。
 だがすぐに溜息をついて頷く。

「まぁいいか。別に僕の目的はそれじゃないんだ」

 怒られるかと身構えていた魔理沙が呆れたような顔になり、それを見て香霖が、微笑みを浮かべた。
 予想外の、まさかこんな所で見ることになるとは、という思いと、何を企んでいるのかという考えが即座に浮かび、更に身構える。
 だが香霖はそれに対して苦い笑みを返し、木の裏に足を進め。

「さて、初日の出だ魔理沙。富士も鷹も茄子もないけれどね」

 先ほどまで暗かった空に陽が上り始めており、見つめていれば。

「おぉ。こりゃまた絶景かな絶景かなってところだな」
「雨も降らないこの山の初日の出はこの間射命丸君に聞いてね。これを見ようと思ったんだ。君と」

 君と、の言葉に魔理沙は顔を赤くなってくるのを感じる。
 それはつまり。
 自分と見たいということで。

「……おう」

 ろくに声も出せない事に気づく。
 もしこれが夢だったら凄い恥ずかしいことだ。けど、これは夢じゃないから。
 
 


 そこで、目が覚めた。
 

「何を恥ずかしい夢を見てるんだ私は!」
 
 初夢から霖之助の夢を見るなんて、と魔理沙は顔を赤くしながら起き上がる。
 どうやら昨日、年を越した後に眠ってしまったらしい。
「あー。変な夢見た。顔洗ってくるか」
 
 神社で寝ている皆の身体をまたいで通り空を見上げればすでに真昼となっている。
 今香霖堂へ行けば霖之助は起きて新年という事もあり何かをしているだろうが。
 
「……今日はなんかいいや」  
 呟いて顔を洗う。
 鷹も富士も茄子もなかったが、今年の夢には霖之助が出てきた。
 はてさて、今年の彼女の運勢は、どんなものやら。


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