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霖之助考察〜ラノベ編〜

 夏の日差しが降り注ぐ魔法の森。そこに一つの店が建っていた。
 今日も暇を潰すかのように森近・霖之助が本を読んでいた。
 それは先ほど拾ったばかりの本で、外の世界から流れてきたものである。
 タイトルはかすれていて読むことはできないが、しかしどこか漫画のような絵がところどころにはさまれている。
「これは中々面白いね」
 半ばまで読み勧めていた本を閉じて霖之助は、しかし言葉とは裏腹の表情を浮かべていた。
 何か悩むような、恐ろしいものを見るかのような表情を。
「よう香霖。呆けたような顔してどうしたんだ? 夏の暑さにでもやられたか」
 夏の日差しの下、風を突っ切って現れたのは黒白の魔女、霧雨・魔理沙。額に垂れる汗と、どことなくぼろぼろな服であることから誰かと弾幕勝負をしてきたことが伺える。
「森の近くだからまだマシさ。里の方はもっと暑いだろうからね。君の方こそ暑そうだけれど」
「氷でもとってくるかと思ったらチルノと戦うことになってな。やってる最中は涼しかったけど終わったら汗だくになったぜ」
「家で静かにしている方がいいと思うけれどね。ところでお茶菓子として最中があるんだが」
「最中で最中か。言葉遊びだな」
 帽子と箒を定位置に立て掛け魔理沙は霖之助からお茶を奪い普段座っている壷の上にへと座る。
「それで、今日は何を読んでるんだ?」
「あぁ、題名は掠れて読めないがただの本だよ。……一見ね」
 意味深な口調で霖之助が呟き、魔理沙へと本を見せる。確かに題名は掠れていて読めず、なぜか中も題名と同じ場所が掠れていて読めなくなっていた。
 微かに読めるのは一部で、スレイヤーという題名が見える。
「なんか物騒な名前の本だな。どんな本なんだ?」
 お茶を一気に飲み干して水分を補給し、魔理沙は身を乗り出す。汗はまだ出ているがこの程度ならば気にすることでもない。
 聞かれた側の霖之助は魔理沙の反応に気をよくしたのかどことなく機嫌良く頷いて本を魔理沙へと渡しながら言う。
「用途は楽しむもの、というものだけれど。もしかするとこれは魔道書なのかもしれない」
 単語を聞いた瞬間魔理沙の目つきが変わる。巧妙に作られた魔道書は、霖之助の能力ですらも騙す、ということもありえるかもしれず。用途がわかる程度の能力を持つ霖之助にその用途を隠せる程ともなれば一級の魔道書であるという証拠である。霖之助の勘違いでなければだが。
「へぇ……。……なんか絵が付いてるけど、これはなんだ?」
「おそらくそれはカモフラージュと僕は見ている。絵には隠された意味を含めることが可能という事は知っているだろう? 魔方陣を何かに隠して描くという手法は昔からある。絵画などに化けさせてそれを魔法として使用することだって不可能ではないはずさ。だからそれはきっと魔方陣の一部なんだと僕は見ているんだ。魔法については君の方が詳しいだろうから君が来たことは渡りに舟だったね」
「魔女が使うのは箒で舟じゃないぜ」
「どちらも人を乗せるというのは変わりないだろ?」
 軽口の応酬をしながら魔理沙は文庫サイズの本を徐々に徐々にと読んでいく。読む表情は真剣そのもの。滅多に見られるものではあるまい。
 霖之助はその様子を見ながら満足気に頷いて更に言葉を進める。
「さて本題に入ろう。その本の中では魔法を使える者がいる。これはよくある話だ。君だって魔法を使えるんだしね。その本の彼女もまた人間だが魔法を使っている。一方で巫女的役割の存在もいるようだ。これは霊夢に当てはめると面白いかもしれない。そしてまた重要な位置に属するのは魔族。これは西洋の文化だけれど日本にも似た存在として妖怪も居るし、妖獣のような存在もいて、半獣もいる。それを書いた人物は名前からして日本人だろうね。つまり西洋に日本を当てはめることによって日本とは違う場所だという知識を持たせている」
 本を読むことに集中し始めている魔理沙は霖之助の言葉を話半分で聴いていたが、しかし最後の言葉に疑問そうな表情を浮かべて霖之助んを見つめる。
「ん? 違う場所だとして、何か意味があるのか?」
「違う場所だと錯覚させることによってこんなことはありえない、という知識を持たして現実ではないという錯覚に陥らせるんだと僕は思っている。実際に魔道書の存在を隠し、けれど魔法についての知識も誤解を与えさせ、更には読んだ人の認識がずれて魔法という者を使えなくする意図も持っているのかもしれないね」
「成程な。読んだだけで魔法は使えようになっちゃ、私としては形無しだぜ」
 頷き、そして魔理沙はまた本を読む作業へと戻り始めた。
 だが霖之助はそれを見ることなく自分の考えを更に口から出し始める。
「重要な言葉は魔族の頂点に君臨する魔王という存在だろう。これは日本でいうなら神に相当する位置だと思う。もちろん神は数え切れない程多くいるが、その中でも最も力の強い神という認識で居れば十分だろうね。魔王や魔族という存在は彼女らが住んでいる場所とは違う次元に住んでいる。これは、僕らの住む幻想郷を思い出させないかい? そしてその主人公である彼女は魔王といった者の力を借り強力な魔法を使用している。使えば大陸の形が変わるかもしれない程に大きい力をね。そしてその魔法は黒魔術といっている。もしかすると君も神様の力を借りればそんな魔法が使えるのかもしれないね。……もっともこれは巫女の役割と似ているし君はそれが出来てもやらないだろうけれど」
「神様の力なんか借りなくても私は強いぜ?」
「知っているよ。君の性格もね。……さて。ここまで言えば、その本が魔道書の類なんだということがわかるだろう? もしかすると魔術指南書のようなもので魔道書とは違うかもしれないけれど、しかし僕としては魔道書として推したい。書いてある呪文、闇より(略)という呪文はさすがに本物ではないだろう。けれど君なりに考えればもしかするとそんな呪文も使えるかもしれないね。研究の一環として試してみるのもありかもしれないよ?」
 そう言って霖之助は言葉を完全に締めくくり魔理沙の反応を待つ。流れ読みをしていた魔理沙は一度頷き、口元を吊り上げて笑みを浮かべた。それは、何か計画を思い浮かべた際の笑み。
「それじゃ、この本は借りていくぜ。試したいことができたんだ」
「どうせ死ぬまでと言うんだろうね。まぁ僕としても自分の仮説があっているか確かめたいからいいよ。
 魔理沙は立ち上がり、帽子を被り箒を手にとって急ぎ足で店から出て行く。
 その光景を霖之助は楽しげに見守って息を吐いた。
 もしあの本が正しければ魔理沙の魔法も面白いことになるかもしれない。そんな期待に胸躍らせて、霖之助は更に先ほどの仮説に対しての想像を巡らせる。

 研究が成功するかどうかを知っているのは、その光景を楽しげに見ていた隙間妖怪のみだろう。

二つ前へ