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日常の中の非日常



 私は地味なサラリーマンだ。
 あまり目立つような業績をあげたことはない。
 仕事が出来ないというよりは効率が悪いと同僚に何度か言われたので 仕事についてはそれが原因なのだろう。
 効率良く仕事を出来るようになれば、そう。
 私は今残業をしていなかったはずだ。
 そう考えても詮無いことではあるのだが。一度大きく溜息をして立ち上がる。
 大体終わったのだし、見直しなどは明日来てからやればいいだろう。
「……よし」
 帰り支度を手早く整えパソコンの電源を落とす。帰り支度だけは素早いのが私の特徴だ。
 そのまま電気を消し早々と会社から出る。会社を出る際に警備員のおじさんの視線が『またかい』と言っていた  ような気がするが気のせいだろうと思う。
 外は寒く、冬としての本領発揮という段階だ。正直な話そんなに働くなといいたい。
 けれど仕方がないだろう。今年もそろそろ終わりでもある。
「……ビデオでも借りてくかな」
 帰っても見れないだろうと思うが、休みまではたったの二日だ。
 日曜に見ると考えれば問題はないだろう。一度欠伸をしてまた歩き始める。
 会社からは遠いというわけでもないから徒歩なのだが、さすがに残業帰りは足が重い。
 疲れがたまっているからだろうかそれとも精神的なものだろうか。
 これは家に帰ったら早く寝ておくのが良いだろう。
 
「ねぇおじさん」
 
 ふらふらとした足取りで進んでいたら、後ろから子供の声がしてきた。
「……? ん? えっと、はい?」
 何でこんな時間に子供……。という疑問を残しつつ振り返る。
 するとそこには一昔前のアニメに出てくるようなキャラクターの服を来た少女が可愛らしい笑みで立っていた。
 目の色はカラーコンタクトでも入れているのか薄紫。髪の色は染めているのか桃色という気合の入れっぷりだった。
 思わず、固まるしかない。
 それ以外に私が出来ることはない。
「おじさん、あの、■■■■を見ませんでしたか?」
 唖然としている私に、少女はもう一度強調するように問いかける。
「あの、■■■■を見ませんでした?」
 はっ、と気づき、言葉の意味を理解しようとしてまた固まる。
 話される言葉の意味が理解できないという事に。
「え……っと。ぎもにん?」
 どうにか聞こえたことを言葉にすると少女は残念そうに首を横に振る。
「いえ。■■■■です」
 それはどこの一体全体国の言語なんだと思わず口に出そうになるが、そこは大人の余裕で堪えた。
「えっと、ごめんね。ちょっと、私にはわからないかな」
「そう、ですか。ありがとうございます。夜は危険ですから気をつけてくださいね!」
 少女は少し落ち込むように顔を俯けるが、すぐに顔を上げて華の咲くような笑顔を浮かべた。
「……いや、君のほうが危ないだろう? 夜も遅いんだから。早くお家に帰ったほうがいいよ」
「大丈夫です、私魔法少女ですから」
 もう一度、固まった。
 理解不能という言葉だけが私の頭の中を埋め尽くす。
 魔法少女。
 魔砲少女?
 魔法猩猩?
 いや。落ち着くんだ自分。クールになれ。科学が発達した現代日本で魔法なんて単語は物語やテレビにしかない。
 あるとしてもそれはマジック。
 マジシャンの類だ。
「えっと……。そうなんだ」
 無難に言葉を返し。早く自分の家に帰ろうという気持ちが脹らみ続ける。
 実際、魔法少女なんていってるこの子と関わっているのは怖い。
「そうなんです。それでは、お気をつけて」
 ぺこりと一度可愛くお辞儀をして少女は私の目の前から歩き去って行った。
 魔法少女というぐらいなのだから空でも飛べばいいものをとそれを眺めながら思う。
 私はそれを寒空の中遠めで見えなくなるまで見送り。
「……多分、マジシャンのことだろう。そうに決まってる」
 小さく呟き、固く自分の心に言い聞かせる。
 けれど。
「……ビデオは、アニメを借りるか」
 何故か頭に残り、私は魔法少女もののビデオを借りることに決めた。
 魔法少女ものを見たのは確か昔にやっていたカードを操りどうのこうのとかぐらいだ。
 今の流行がなんなのかは知らないが面白いものはあるだろう。
 ふぅ、と溜息をついて寒空の下ビデオ屋へと向かった。
 ちょっとした非日常の記憶を抱き。
     




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